賃貸経営で相続税を減らす?アパート建築の節税効果と注意点

アパート建築による相続税対策

「相続税対策にアパートを建てませんか?」――更地や駐車場をお持ちの方なら、ハウスメーカーや銀行から一度はこうした提案を受けたことがあるのではないでしょうか。

確かに、賃貸アパートを建てることで相続税評価額は大きく下がります。しかし「節税になるから」という理由だけで建ててしまうと、空室や借入返済に苦しみ、結果的に資産を減らしてしまうケースも少なくありません。

今回は、アパート建築でなぜ相続税が下がるのかという仕組みと、建てる前に必ず確認しておきたい注意点を、税理士の視点から整理してお伝えします。

目次

なぜアパート建築で相続税が下がるのか

賃貸アパートを建てると、土地・建物の両方の相続税評価額が下がります。さらに条件を満たせば、土地について特例による大幅な減額も使えます。仕組みは大きく次の3つです。

① 土地の評価が「貸家建付地」になる

ご自身でアパートを建てて他人に貸している土地は、貸家建付地(かしやたてつけち)として評価され、更地より低く評価されます。計算式は次のとおりです。

貸家建付地の評価額 = 自用地評価額 ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

  • 借地権割合:路線価図に記載されたA〜G(90%〜30%)の記号で示されます。昭和区の住宅地(御器所・川名・八事の住宅街など)はE:50%が中心で、広小路通沿いなど主要道路に面したエリアでD:60%。商業地ではより高くなります。
  • 借家権割合:全国一律で30%
  • 賃貸割合:貸している部屋の床面積の割合(満室なら100%)

たとえば、借地権割合50%・借家権割合30%・満室の場合、評価減は0.5 × 0.3 = 15%です。1億円の土地なら1,500万円の評価減となります。

② 建物の評価が「貸家」になる

アパートの建物そのものは、相続税では固定資産税評価額で評価されますが、賃貸している場合は貸家評価となり、さらに30%減額されます。

貸家の評価額 = 固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合30% × 賃貸割合)

建築費1億円のアパートでも、固定資産税評価額は通常6〜7割程度(6,000〜7,000万円)。そこから30%減額されるため、実際の評価額は4,200〜4,900万円程度まで下がります。

③ 小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)が使える

一定の要件を満たせば、貸付事業用宅地として200㎡まで土地評価額が50%減額されます。被相続人が3年を超えて貸付事業を行っていたことなどが要件です。

「3年以内に貸付を始めた土地は対象外」という制限(2018年改正)があるため、相続直前に駆け込みで建築しても特例は使えません。早めに着手することが重要です。

具体例で見る評価減の効果

更地1億円の土地と現金1億円(合計2億円)をお持ちの方が、その現金1億円でアパートを建てた場合(借地権割合50%=昭和区の住宅地の標準ケース・満室・小規模宅地等の特例適用)の評価額を比較してみましょう。

項目 更地のまま アパート建築後
土地評価額 1億円 8,500万円(貸家建付地)
小規模宅地等の特例(50%減) △4,250万円
土地の最終評価額 1億円 4,250万円
建物評価額 約4,550万円(貸家評価)
現金 1億円
評価額合計 2億円 約8,800万円
評価減効果 △1億1,200万円

※建築費1億円・固定資産税評価額6,500万円(建築費の65%目安)・賃貸割合100%・土地面積200㎡以内として試算。借地権割合の高い商業地寄りのエリアならさらに大きな評価減となります。実際の数値は建築仕様・地域によって変動します。

なお、自己資金ではなく建築費を借入で賄った場合(手元の1億円は温存)でも、相続財産は「土地+建物の評価額 + 残った現金1億円 − 借入金1億円」となるため、現金と借入金が相殺され、評価額は同じく約8,800万円に着地します。

ポイントは、「借金をしたから相続税が減る」のではなく、現金や借入で建てた建物の評価が、投じた金額(=現金 or 借入残高)より低くなるから差額分だけ評価が下がるということです。借金そのものに節税効果があるわけではありません。

建てる前に必ず確認したい4つの注意点

評価減のインパクトは確かに大きいのですが、私たちがご相談を受けるなかで「やめておけばよかった」と後悔されているケースも一定数あります。建築を判断する前に、次の4点を必ず確認してください。

① 空室リスク ― 「30年一括借上げ」の落とし穴

ハウスメーカーが提示する収支シミュレーションは、満室・家賃下落なしを前提にしていることが少なくありません。実際には築年数の経過とともに家賃は下がり、空室も発生します。

「サブリース(一括借上げ)で家賃保証」という提案も、契約上は数年ごとに賃料を見直せる条項が入っているのが通常です。10年後・20年後にも当初の家賃が保証されるわけではありません。

② 借入金返済リスク

相続税対策で建てたアパートが赤字になり、ご家族が借入返済に苦しむケースは珍しくありません。建築前に、家賃が2〜3割下落した場合・空室率が20%になった場合の収支も必ず試算してください。

③ 立地と需要の見極め

賃貸需要のある立地かどうかは、評価減の大きさより重要です。名古屋市内でも、昭和区・瑞穂区・天白区のように学生・単身者・ファミリー層の需要が安定している地域と、人口減少が進む地域では、長期的な収支が大きく変わります。

ご所有の土地が「アパートに向いているか」は、地元の不動産事情を熟知した第三者の意見も聞いたうえで判断するのが安全です。

④ 遺産分割への影響

アパートは現物のため、お子様が複数いらっしゃる場合、分割しにくいという側面があります。「長男にアパート、次男には預金」と分けても、収益性や管理負担に差が出てトラブルのもとになることも。

建築前から、誰に承継させるかを家族で話し合っておく、または遺言書で指定することをおすすめします。

アパート建築のメリット・デメリット

観点 メリット デメリット
相続税 土地・建物の評価減+小規模宅地特例で大幅減
収益性 安定した家賃収入が見込める 空室・家賃下落リスク
流動性 売却しにくく、現金化に時間がかかる
分割 現物のため分けにくい
管理 管理会社に委託可能 管理コスト・修繕費が継続発生

「節税」だけを切り出せば魅力的に見えますが、収益性・流動性・分割のしやすさを総合的に判断することが欠かせません。

まとめ ― 「節税ありき」で建てない

アパート建築は、確かに相続税対策として強力な選択肢の一つです。一方で、建てたあとに数十年続く賃貸経営が前提になるため、「税金が減るから」という動機だけで判断するのは危険です。

私たちが大切にしているのは、「税金を減らすこと」ではなく「ご家族の資産を守り、次世代に円滑に引き継ぐこと」です。アパート建築が本当にご家族にとって最適かどうかは、土地の立地・ご家族の構成・他の資産とのバランス・将来の収支シミュレーションを総合的に検討して判断する必要があります。

「ハウスメーカーから提案を受けているけれど、本当に建てていいか不安」「節税効果と収支リスクを中立的に評価してほしい」――そのようなご相談は、お気軽に南山税理士事務所までお問い合わせください。初回面談は無料、昭和区・鶴舞線いりなか駅1番出口から徒歩1分、相続専門の税理士が、お客様の立場でセカンドオピニオンをお伝えします。


本コラムは一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談ではございません。実際の賃貸経営・相続税対策にあたっては、個別の事情を踏まえた専門家への相談が必要です。

アパート建築・相続税対策のご相談は、南山税理士事務所までお気軽にお問い合わせください。昭和区・瑞穂区・天白区を中心に、地元密着型で丁寧にサポートいたします。

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