「財産のほとんどが土地と建物で、現金は少ない」「自宅のほかにアパートと駐車場があるが、子ども3人にどう分ければいいのか」――いりなかの当事務所には、昭和区・瑞穂区・天白区で複数の不動産をお持ちのご家庭から、こうしたご相談が数多く寄せられます。
不動産が多いご相続には、共通する2つの悩みがあります。ひとつは「分け方」。不動産は現金のように等分できません。もうひとつは「納税資金」。相続税は原則として現金で一括納付なのに、財産の大半が不動産だと納税のための現金が足りなくなりがちです。
今回は、不動産が多いご家庭が相続で困らないために、分け方の考え方と納税資金の準備について、地元税理士の視点から整理します。
なぜ「不動産が多い相続」は難しいのか
昭和区・瑞穂区・天白区は戸建て住宅が中心の住宅地で、代々の土地をお持ちのご家庭では、相続財産に占める不動産の割合が7〜8割ということも珍しくありません。不動産中心の相続が難しいのは、次の3つが同時に起こるためです。
- 分けにくい:土地や建物は1円単位で割れません。「長男に自宅、次男に現金」としたくても、釣り合う現金がなければ不公平感が残ります。
- 納税は現金:相続税の申告・納付期限は相続開始から10か月。土地がいくらあっても、納税は原則現金です。
- すぐに売れない:不動産の売却には通常数か月かかります。焦って売ると、相場より安く手放すことになりかねません。
つまり、分け方と納税資金は別々に考えられないのです。「誰がどの不動産を引き継ぐか」が決まらなければ、「誰がいくら納税するか」も決まりません。どちらか一方だけ対策しても、相続の全体はうまくいきません。
分け方の考え方――「どの不動産を・誰に・何のために」
遺産分割の方法には、現物分割・代償分割・換価分割などがあります(各方法の基本は3区の不動産相続を解説したコラムをご覧ください)。不動産が複数あるご家庭では、その前提として一つひとつの不動産に「役割」を決めることが出発点になります。
- 残す不動産:ご自宅など、家族が住み続ける土地。小規模宅地等の特例の適用も見据えて、引き継ぐ人を決めます。
- 収益を生む不動産:アパートや貸店舗など。管理の手間と収益がセットなので、実際に管理できる相続人が引き継ぐのが原則です。
- 手放してよい不動産:使っていない駐車場や遠方の土地など。納税資金や代償金の原資として、売却を前提に考えます。
この仕分けをせずに「とりあえず全部を兄弟で共有に」とすると、次の世代で共有者がさらに増え、売ることも建て替えることもできない土地になってしまいます。安易な共有は避ける――これは不動産相続の鉄則です。
ポイント
分け方を考えるときは、今回の相続だけでなく二次相続(配偶者が亡くなったときの相続)までを視野に入れることが大切です。一次相続で配偶者に不動産を集めすぎると、二次相続で分け方と納税の問題がより大きくなって戻ってくることがあります。
納税資金の準備――4つの方法と使いどころ
納税資金の準備には、大きく4つの方法があります。それぞれ向き・不向きがあります。
| 方法 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 預貯金・金融資産 | 手元の現金で納付する基本の形 | 不動産中心のご家庭では不足しがち |
| 生命保険 | 死亡保険金を納税資金・代償金に充てる | 「500万円×法定相続人の数」の非課税枠も活用できる |
| 不動産の売却 | 「手放してよい土地」を現金化する | 売却には時間がかかる。どの土地を売るか生前に決めておくと安心 |
| 延納・物納 | 分割払い(延納)や不動産での納付(物納) | 要件が厳しく利子税もかかるため、あくまで最後の手段 |
不動産が多いご家庭で特に力を発揮するのが生命保険です。死亡保険金は受取人固有の財産として遺産分割の対象外で、請求すれば比較的早く現金になります。納税資金だけでなく、自宅を引き継ぐ相続人が他の相続人に支払う代償分割の代償金の原資にもなります。
また、相続した土地を売って納税に充てる場合は、取得費加算の特例(相続税の申告期限の翌日から3年以内の売却で、納めた相続税の一部を譲渡所得の計算上取得費に加算できる制度)が使えることがあります。売却のタイミングひとつで手取りが変わるため、売る予定の土地こそ早めの計画が大切です。
生前にできる準備――財産の「見える化」から
こうした対策は、相続が起きてからでは選択肢が限られます。生前であれば、次のような準備ができます。
- 財産の一覧をつくる:どこにどんな不動産があり、評価額がいくらか。まずは全体像の「見える化」が第一歩です。土地の評価額は路線価から概算できます(令和8年分路線価のコラムもご参照ください)。
- 相続税額と納税資金の過不足を試算する:税額の見込みが分かれば、現金がいくら不足するのか、生命保険や売却でどう補うのかを具体的に考えられます。
- 分け方の方針を家族で共有する:「自宅は長男に、アパートは次男に」という方針が生前に共有されているだけで、遺産分割は格段にスムーズになります。遺言書に残せばより確実です。
- 評価引き下げ・生前贈与も組み合わせる:小規模宅地等の特例の適用要件を整える、生前贈与で少しずつ財産を移すなど、納税資金・遺産分割とあわせて全体で設計します。
まとめ
不動産が多いご家庭の相続は、「分け方」と「納税資金」を切り離さず、財産全体でバランスを取ることが何より大切です。一つひとつの不動産に役割を決め、納税資金の手当てを組み合わせ、二次相続まで見据える――この順番で考えれば、土地の多いご相続も落ち着いて備えられます。
当事務所は、昭和区・瑞穂区・天白区の土地事情に日々接している地元の税理士として、納税資金・遺産分割・評価の引き下げ・生前贈与を組み合わせた全体最適の相続対策をご提案しています。「うちは不動産ばかりで現金が少ない」という方こそ、早めの準備が効果を発揮します。
不動産が多いご家庭の相続対策・相続税申告のご相談は、お気軽に南山税理士事務所までお問い合わせください。初回面談は無料です。南山税理士事務所は、鶴舞線いりなか駅1番出口から徒歩1分。昭和区・瑞穂区・天白区を中心に、地元密着で相続をサポートしています。
本コラムは一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談ではございません。相続税の計算や各特例の適用可否は、財産の内容やご家族の状況により異なります。具体的な申告・対策にあたっては、専門家への相談をおすすめします。
不動産の分け方・納税資金のご相談は、南山税理士事務所までお気軽にお問い合わせください。地元密着型で、評価から申告・生前対策まで丁寧にサポートいたします。

