「終活を始めたいけれど、何から手をつければいいのか分からない」――いりなかの当事務所には、昭和区・瑞穂区・天白区のみなさまから、こうしたご相談が寄せられます。昭和区の人口は109,523人・57,304世帯(令和8年7月1日現在/名古屋市の推計人口)。落ち着いた住宅地で、代々同じ土地にお住まいのご家庭も多い地域です。
終活には、大きく2つの領域があります。ひとつは「暮らしの終活」。見守り、介護、もしものときの連絡先といった、日々の安心にかかわる部分です。もうひとつは「財産の終活」。誰が何を引き継ぐのか、相続税はかかるのか、名義をどうするのかという部分です。
この2つは、頼れる相手がまったく違います。前者には昭和区に地域の仕組みがあり、一人で抱える必要はありません。後者は、地域では動かせません。今回は昭和区で使える窓口を整理したうえで、税理士の視点から「財産の終活」の進め方をお伝えします。
昭和区で「暮らしの終活」を支えてくれる窓口
名古屋市では、高齢者の総合相談窓口を「いきいき支援センター」と呼びます(他の自治体で「地域包括支援センター」と呼ばれている機関のことです)。昭和区には2か所あり、学区によって担当が分かれています。
- 昭和区東部いきいき支援センター(052-861-9335)……八事・滝川・広路・川原・伊勝の各学区
- 昭和区西部いきいき支援センター(052-884-5513)……松栄・御器所・吹上・鶴舞・村雲・白金の各学区
介護保険の手続き、認知症の心配、ひとり暮らしの不安など、「どこに聞けばいいのか分からないこと」の入口になる窓口です。このほか昭和区では、社会福祉協議会を中心とした見守りネットワーク、認知症で行方が分からなくなった方の探索支援、老人クラブ、「ちょっとした困りごと」の相談窓口が動いています。
もっと身近な備えとしては、外出時にかばんへ付けておく「ショウちゃんみまもり袋」や、自宅の冷蔵庫に入れておく「安心ほっとカプセル」もあります。どちらも緊急連絡先やかかりつけ医を書いておくもので、倒れたときに救急隊へ情報が伝わります。費用もかからず、今日から始められる終活といえます。
ポイント
地域の仕組みが支えてくれるのは「暮らし」です。一方で、財産の名義や分け方は、ご本人とご家族しか決められません。終活を「暮らし」の準備だけで終えてしまうと、いちばんもめやすい部分が手つかずで残ります。
エンディングノートでできること・できないこと
終活の第一歩として広く知られているのがエンディングノートです。ただ、ひとつ押さえておきたいことがあります。エンディングノートに法的な効力はありません。「自宅は長男に」と書いても、相続人がそのとおりに分けなければならない義務は生じません。遺産の分け方を決めたいのであれば、遺言書が必要になります。
| エンディングノート | 自筆証書遺言 (法務局に預ける) |
公正証書遺言 | |
|---|---|---|---|
| 法的な効力 | なし | あり | あり |
| 費用の目安 | 市販のノート代のみ | 保管の申請1件 3,900円 | 財産の額に応じた公証人手数料 |
| 得意なこと | 財産や連絡先の情報整理、気持ちを伝える | 費用を抑えて、紛失・改ざんの心配なく残す | 形式・内容の不備を防ぎ、確実性が高い |
とはいえ、エンディングノートの価値は小さくありません。財産の「在りか」の地図になるからです。相続の実務でいちばん時間がかかるのは、税額の計算ではなく財産を探す作業です。どの銀行に口座があるのか、生命保険はどこの会社か、貸金庫の鍵はどこか――これが分からないまま10か月の申告期限を迎えるご家庭が、実際にあります。
つまり、気持ちと情報はエンディングノートに、財産の行き先は遺言書に。遺言書の種類ごとの違いは遺言書の種類と書き方で解説しています。
自筆証書遺言書保管制度|昭和区の方は名古屋法務局へ
「公正証書遺言はハードルが高いけれど、自分で書いた遺言書では心配」という方に向いているのが、法務局の自筆証書遺言書保管制度です。自分で書いた遺言書を法務局(遺言書保管所)に預けられる制度で、保管の申請にかかる手数料は1件3,900円です。
- 紛失・改ざんの心配がない……原本と画像データの両方が長期間保管されます。
- 家庭裁判所の検認が不要になる……自宅で保管した自筆証書遺言は相続開始後に検認という手続きが必要ですが、この制度を使えば不要です。
- 亡くなったことを通知してもらえる……あらかじめ希望しておけば、法務局が死亡の事実を確認した時点で、指定した方(最大3名)へ通知が届きます。「せっかく書いた遺言書が見つからない」を防げます。
愛知県内では、名古屋法務局の本局と各支局が遺言書保管所に指定されています。住所地・本籍地・所有する不動産の所在地のいずれかが愛知県内にあれば、県内の保管所ならどこでも申請できます(予約が必要です)。
注意
法務局が確認するのは、日付や署名・押印といった形式(外形)だけです。遺言の内容についての相談には応じてもらえません。したがって「法務局に預けたから安心」とはいえません。遺留分を侵していないか、その分け方だと相続税が高くなってしまわないか、小規模宅地等の特例が使えるか――内容の検討は、預ける前に専門家と行うことをおすすめします。
「財産の終活」は、この順番で進める
財産の終活は、思いつく順にやると必ず途中で止まります。次の順番で進めるのが確実です。
- 財産の一覧をつくる:不動産、預貯金、有価証券、生命保険、借入金まで、1枚の紙に書き出します。金額は概算でかまいません。土地の評価額は路線価から見当がつきます(不動産の相続税評価額はどう決まる?路線価の基本)。
- 相続税がかかるかどうかを確かめる:目安になるのが基礎控除です。3,000万円+600万円×法定相続人の数を超えるかどうかで、申告が必要かの見当がつきます(相続税の基礎控除とは?)。昭和区は路線価の水準が高い地域なので、ご自宅と預金だけでも基礎控除を超えるご家庭は珍しくありません。
- 分け方と納税資金をセットで決める:相続税は原則として現金で一括納付し、期限は相続開始から10か月です(相続手続きの期限は4つ)。不動産中心のご家庭では、納税資金の手当てが分け方そのものを左右します。生命保険の「500万円×法定相続人の数」の非課税枠は、納税資金づくりと節税を同時に進められます(生命保険を活用した相続税対策)。
- 家族に伝える:ここまで決めても、伝わっていなければ争いの種は残ります。「自宅は誰に」「なぜそう決めたか」まで共有できれば、遺産分割は格段に穏やかに進みます。
判断能力があるうちにしかできないこと
終活のご相談で「もっと早く始めればよかった」と最も強く感じるのは、実はここです。認知症などで判断能力が失われると、次のことができなくなります。
- 遺言書を書く、書き直す
- 生前贈与をする(生前贈与で相続税を減らす)
- 不動産を売る、貸す、建て替える
- 生命保険の受取人を変更する
預金についても、金融機関がご本人の意思を確認できない場合、ご家族からの払い出しに応じてもらえないことがあります。介護費用や施設への入居費用を、親の預金から出せなくなるという事態です。
こうなってから使える手段は、成年後見制度が中心になります。財産を守るための制度ですので、相続税対策のための贈与や、収益目的の不動産の組み替えは原則としてできません。判断能力があるうちであれば、遺言書や生前贈与のほか、任意後見契約や家族信託といった選択肢も検討できます。
ポイント
終活に「まだ早い」はありますが、「まだ間に合う」とは限りません。判断能力は、ある日を境に少しずつ失われていきます。元気なうちに一覧をつくり、方針を決めておく。これが財産の終活でいちばん効く準備です。
まとめ
昭和区には、いきいき支援センターや見守りネットワークといった、暮らしを支える仕組みが整っています。「暮らしの終活」は、一人で抱え込まなくてよいということです。一方で、「財産の終活」は、ご本人とご家族が決めるしかありません。財産の一覧をつくり、相続税の有無を確かめ、分け方と納税資金をセットで考え、家族に伝える。この順番で進めれば、終活は決して難しいものではありません。
当事務所では、「財産の一覧をつくるところから一緒に」というご相談を数多くお受けしています。相続税がかかるのかどうかの見通しが立つだけでも、その先の終活はぐっと具体的になります。相続税申告・対策500件超の経験から、昭和区・瑞穂区・天白区の土地事情を踏まえてご提案します。
終活・相続の生前対策のご相談は、お気軽に南山税理士事務所までお問い合わせください。初回面談は無料です。南山税理士事務所は、鶴舞線いりなか駅1番出口から徒歩1分。ご相談から申告まで代表税理士が直接担当し、途中で担当が代わることはありません。
本コラムは一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談ではございません。記載の制度・手数料は2026年8月時点の法令等に基づいています。昭和区の各窓口や制度の詳細は、名古屋市・法務局の公表情報および各窓口でご確認ください。具体的な対策・申告にあたっては、専門家への相談をおすすめします。
終活の進め方・生前の相続対策のご相談は、南山税理士事務所までお気軽にお問い合わせください。地元密着型で、財産の見える化から遺言書の内容の検討、相続税申告まで丁寧にサポートいたします。

